女子高校生が感じるジェンダーバイアス
2019年10月に発行した調査報告書の一部を抜粋してご紹介します。
はじめに
少女は未来の女性。
1975年国際婦人年から44年。
2015年には女性活躍推進法が成立し、「女性の活躍」のための施策が各方面で見られるようになりました。
未来にわたり、一人ひとりが可能性を最大限に発揮できる社会となる鍵は、次世代の女性である少女が握っています。
近年、女性の幸せが多様化する中で、その少女たちは、どんな期待や不安を抱いているのでしょうか。
ガールスカウトでは「人への役立ち」という価値観を大事にしてきました。
より高度化する社会の中で、より積極的に人への役立ちを果たすため、近年はアドボカシー活動を推奨しています。
2011年、世界のガールスカウトは「ジェンダーに基づく差別と暴力」を根絶する取り組みとして、Stop the Violenceキャンペーンを始めました。

このキャンペーンでは、教育プログラムや地域プロジェクトと並び、調査活動を重視しています。今般の「女子高校生調査2019」は、この活動の一環としておこなれました。
日本に先駆けて、イギリスやアメリカ、カナダなどのガールスカウトは、少女たちが力をつけ、その力を発揮することができる社会を創るために、少女の声を積極的に聞き、それを社会に届けています。
私たち、日本のガールスカウトも、アドボカシーの一つとして今回の調査を通して明らかになったことを声に出し、
社会に届けることでよりよい社会を創るための行動を起こします。

「木」を見て「森」も見る - 本冊子の作成にあたって
世界各国の男女平等の度合を示す指数 *1 があります。この指数は、経済・政治・健康・教育分野における女性割合から算定されており、女性の議員数、管理職に占める女性の割合、男女の賃金格差や高等教育における女性割合などの現状が反映されます。毎年この指数は発表されており、ここ7年ほど日本は100位以下で、2018年は149か国中110位です。
2015年、国連はすべての国の目標として、「持続可能な開発目標 *2(SDGs)」を採択しました。目標5では「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行なう」とされており、「女性の地位向上」は世界共通の大きなテーマです。各国がジェンダー平等に向けて積極的な取り組みを進める中、日本では「女性の活躍」のための政策はあるものの、その進捗は決して順調とは言えず、大人たちは効果的な解決策を模索しています。
この様子は次世代の女性たちである少女たちの目にどう映っているのでしょうか。
今回実施した調査には次の二つの意味があると考えています。
- 女子高校生が経験する「ジェンダーに基づく差別や暴力」を見える化したこと
今回の調査では、女子高校生たちがジェンダーに関してどのような経験をしているか、どう感じているかが可視化され、進学や就職を考える時期の彼女たちに現代社会がどう映っているかの一端を知ることができました。日本では、高校生のジェンダー意識や価値観についての調査はあまり見当たりません。そのため、この調査は彼女たちの不安や悩みを理解することだけでなく、社会が見えていない部分に光をあてる、という意義があると考えています。 - 少女の声に焦点をあてたこと
女子教育を長年おこなっているガールスカウトでは、女子の自己肯定感が男子に比べて低いことを課題として認識しており、女子の自己肯定感向上に対する取り組みをおこなってきました。また、2013年に実施した女子教育に関する調査 *3 では、日本で「女子」のデータを入手することの困難さに直面し、女子の現状を把握するためには、男女別にデータを収集・分析することが重要であることを強く感じました。
日本は、データ分析において男女を「区別」しない傾向があり、調査結果では通常男女の平均値が示されます。平均化することは、女子にとって(そして男子にとっても)現状が正確に理解されないだけでなく、適切な施策が施されないことを意味します。
そのため、今回の調査では、少女の声にしっかりと焦点をあて、彼女たちの期待や不安に十分に関心が集まるようにしました。
今回の女子高校生調査では、オンラインアンケートとグループインタビューを実施しました。オンラインアンケートの詳細は次ページに記載しています。グループインタビューでは、女子高校生たちがアンケート結果に基づいて自分たちの経験や疑問などを話し合いました。本調査の報告会を2019年6月18日衆議院第一議員会館
で実施しており、この冊子では、この一連の取り組みを通しての彼女たちの声を紹介します。
「木を見て森を見ず」ということわざがあります。
一部や細かい部分にこだわりすぎると、全体に注意を向けず、物事の本質を把握できないことを指しています。
今回の文脈では次のように置き換えられます。
木 = 少女の声
森 = 少女や女性を取り巻く社会の現状やしくみ
彼女たちの声は、社会の現状を映しています。少女の声を理解することは社会を理解することです。この調査を通して、女子高校生たちは多くのことに「気づいていない」ことがわかりましたが、それは大人においても同じ傾向があるかもしれません。ジェンダーについては問題があまりにも身近なため、今まで語る機会さえなく、知る機会が限定されているという声をガールスカウト内でもよく聞きます。そして、現代社会は非常に多くの要素が複雑に絡み合っており、膨大な情報に囲まれています。
そのため、この冊子では彼女たちの声をより深く理解するために、少女の成長を支える方々と社会を見る視点を共有したいと考え、調査結果のほかに少女・女性たちをめぐるデータなども含めました。
少女たちが日々直面している現状に耳を傾けるミクロの視点と、世の中を俯瞰するマクロな視点の両方を持ち、この冊子を彼女たちが期待や希望が持てる社会とするためにお役立ていただくことを願っています。
本調査においてのキーワード
社会的・文化的な性差。生物学的な性差と対比として使われる。
社会的・文化的な性差別あるいは性的偏見。
学校には「公式のカリキュラム」として教育する側が明示的に教える内容以外に、学校生活、学校制度、教師の言葉や態度などを通して、子どもたちが学びとっていく規範や価値観、信念などの「隠れたカリキュラム」が存在する。
持ち物の色指定、性別の科目や活動、ステレオタイプに基づく声かけの違いなどを通して、子どもたちはいろいろなことを学び合い、影響を受けている。
同じ状況にも関わらず、対象によって異なる運用基準を設けること。二重基準。
調査の概要
オンラインアンケート
調査対象: 全国44都道府県の女子高校生 15歳~19歳
回答人数: 524人(ガールスカウト会員313人・一般211人)
| 年齢 | 15歳 | 16歳 | 17歳 | 18歳 | 19歳 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 共学校 | 90 | 123 | 114 | 42 | 2 | 371 |
| 女子校 | 18 | 67 | 57 | 11 | 0 | 153 |
調査方法: インターネット回答 全83問(選択80問・記述3問)
調査期間: 2019年3月23日~4月22日
調査項目はイギリスのガールスカウトが実施したGirls Attitudes Survey 2018を参考にしています。
フォーカスグループ(グループでの意見収集)
高校生 8人 大学生2人
調査のねらいと総括
この調査では、三つのことに焦点をあてました。
- 1点目:女子高校生たちはジェンダーに基づく差別や暴力をどの程度経験しているのか
- 2点目:無意識に社会やメディア等から受ける「隠れたメッセージ」や、学校における「隠れたカリキュラム」はどのように存在するのか
- 3点目:イギリスでの同様の調査との比較をおこない、日本の女子高校生の現状を客観的に把握する
調査では 62%の女子高校生が、日常生活の中やメディアの中に、女性であるがゆえの差別や暴力を感じ、97%以上が「社会で女性が公平に扱われていないことがある」と感じているという結果が出ました。そして、日常的に受け取る性役割に基づく価値観は彼女らの自信に影響を与え、特に、女性の容姿に対しての社会からのメッセージは、少なからず少女たちの可能性を阻む原因になっていることがうかがえました。
学校教育の中では「男女平等に扱われることは当たり前のことである」と頭では理解していても、自分たちが無意識に「男らしさ」「女らしさ」に縛られていること、また、実際の社会では「男女平等ではないこと」「男女が公平に扱われていないこと」という、いわゆる【二重基準(ダブルスタンダード)】を高校生たちは目にしているということがあぶりだされました。
イギリスとの比較では、回答の中に「わからない」を選択した数がイギリスと比較して8倍にもなった項目があり
ました。また、差別を感じる割合にも大きな差がありました。これは、イギリスに比べて日本がより平等で公平な
社会であることを示しているわけではありません。日本の子どもたちは、メディアリテラシーや、社会に対して関
心をもち実態を知るという機会が不足しているからではないかと推察しています。
1 木を見るー少女たちの声
- 日常生活にある性差別や暴力
- 社会から受けているメッセージ
- 男女の不公平から生じる社会のありさま
👆少女や女性をめぐる事実
1.日常生活にある性差別や暴力
女子高校生たちの62%が、普段の生活の中で、何らかの性的な嫌がらせや性差別を経験したり見たりしていることがわかりました。その場面は、メディア(テレビ・雑誌・映画・広告など)、インターネット、公共の場などがあげられます。

どのようなときに性的な嫌がらせや性差別を経験したか、具体的な場面や内容について、女子高校生たちの声を紹介します。
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概要:女子高校生が感じるジェンダーバイアス
「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2019
「女子高校生」はジェンダーに基づく差別や暴力をどの程度経験しているのか。無意識に、社会やメディア等から受ける「隠れたメッセージ」や、学校における「隠れたカリキュラム」はどのように存在するのか。イギリスでの同様調査と比較し、日本の女子高校生の現状を客観的な把握。これらのことに焦点を当て、女子高校生を対象にオンライン調査をおこないました。
※販売を終了しました。
発行:2019年10月










