〜 声をつなぐ 〜
2021年3月に発行した調査報告書の一部を抜粋してご紹介します。
はじめに ー 100年も待てない!
世界中が新型コロナウイルス感染症に見舞われた2020年。ニュージーランド、ドイツ、フィンランド、台湾等で前例のない状況を、共感と決断力をもって率いる女性指導者を多く目にしました。また、アメリカでは女性初の副大統領が誕生しました。勝利宣言での「私は最初の女性副大統領だが最後ではない」という言葉は、少女たちに勇気と希望を与えました。ロールモデル (※1)がいると「自分にもやれる」と思うことができるため、少女たちの可能性は更に引き出されることでしょう。
世界各地でジェンダー平等に向けた歩みが進んでいます。着実に取り組みを重ね、21世紀の間にジェンダー平等が達成できるとする国々があります。その一方で、日本を含む東アジア・太平洋地域では、ジェンダー格差の解消には165年(※2)かかるという試算があります。
日本では2003年の小泉政権時代から、「2020年までに女性管理職割合を少なくとも30%に」という政府目標がありました。しかし、その目標は達成されなかったばかりか、特に政治参画においては、2020年の衆議院議員の女性比率は10%(※3)にとどまり、世界166位(※4)とG20の中で最低です。
日本のジェンダー格差解消に向けた歩みは遅く、2020年に男女格差が大きい国121位(※5)となったことは各方面に衝撃を与えました。
日本でジェンダー平等が実現できるのは一体いつになるでしょうか。100年後? それとも200年後? 当然のことながら、そんなに長く待っていられません。社会は私たち一人ひとりの幸せや願いを実現するためにあるものです。
社会は変わるものではなく、変えるものです。変えてきた人たちがいます。近年は、ジェンダーに基づくさまざまな差別を「次世代に引き継ぎたくない」として、行動に起こす人、特に、自分ごととして積極的に声を上げる20代の女性が目立ちます。そしてジェンダー平等に向けた取り組みが加速すれば、その日は確実に早く訪れます。
ここに10代の少女たちの声、未来の女性たちの声を加えませんか。彼女たちの声はこの歩みを速める推進力になるはずです。
- 1 具体的な行動の規範となる人
- 1 具体的な行動の規範となる人
- 2 Global Gender Gap Report 2021 (世界経済フォーラム)
- 3 令和2年度 女性の政策・方針決定参画状況調べ(内閣府)
- 4 Women in Parliament in 2020 (列国議員同盟)
- 5 153国中 Global Gender Gap Report 2020(世界経済フォーラム)・2021年は、156カ国中120位
調査のねらい ー 声は聞こえますか?
私たちの価値観や認識は、意識する・しないに関わらず、さまざまなものから構成されています。子どもたちは、生活の中心となる家庭や学校から、ジェンダーに関する価値観や規範を学びとっていきます。基本的な価値観は思春期から20歳頃までに形づくられるといいます。そして子どもたちは、身の回りのしくみや環境を自分で自由に選択できるわけではありません。
2019年に実施した「ジェンダーに関する女子高校生調査2019」では、少女たちが多くの差別や暴力に囲まれて生活していることが数値化されました。顕在化した深刻な状況は多くのメディアやSNSで話題になり、若者たちの声を聞くことの意義が広く認識されました。この調査では、ジェンダーが少女たちの可能性を妨げている原因になっていることはわかりましたが、彼女らが感じている不安や悩みを把握するにはまだ十分とは言えません。
また、「ジェンダーについて考えたことがない」「質問の内容がわからない」というコメントも多く寄せられ、考える機会を与えられていない少女たちがいました。
そこで2020年の調査では、「隠れたカリキュラム」(7ページ参照)や身体的性別に基づく声かけがどのようにされているかを把握しようと、「女の子だから」をキーワードに、少女たちが日常生活で経験する差別や暴力について無意識に感じていることも含め、可視化することを目指しました。それとともに、ジェンダー平等実現に向けた女子高校生の問題意識を理解することもねらいとしました。
調査では、「女の子だから」という理由で、47%の少女が、日々の活動に制限を受けたり、不平等や不公正を感じたりしているという結果になりました。また、37%が「学校の先生の言動にジェンダーの偏りを感じる」、共学校に通う54%が「教師の期待や言動等は男女で異なる」と感じています。学校で性別役割分担がおこなわれ、ジェンダー規範に基づいて、活動機会が制限されています。自由記述に
は「リーダーシップをとらなくてよい」「スポーツや進路をあきらめた」「家事を期待される」「荷物運びはしなくてよい」といった、チャレンジする機会が限定的で、枠にはめられている女子高校生の姿が見えました。
また、「メディアで男女が平等に描かれている」と思うのは8%、「テレビでもっと多くの女子スポーツが放映されると、スポーツをする女子が増える」と思うのは78%など、現在のメディアの姿勢に疑問を呈する少女が多くいることが改めて認識されました。
社会では、「女性活躍」「男は仕事、女は家事という価値観は古い」というメッセージが伝えられています。その一方で、現実には性別によって役割に偏りがあったり、メディアでは女性が映らない、十分な尊重がされていない描写がされることは、女子高校生を不安にし、困惑させているようです。
回答者の96%以上は、女子の大学進学や経済的自立に価値をおいています。その一方、「女の子は料理ができてあたりまえ」「理系は苦手」と感じている割合がそれぞれ44%、48%となりました。「男女は平等だ」と理解し、自由に自己実現ができる未来を希求する反面、「女子はこうあらねば」というメッセージを内在化していました。少女たちが社会のしくみや環境、価値観などから無意識に影響を受け、自由な発想や自発的な行動を阻害しているという事実が数値で示されることとなりました。
現在日本で女性管理職割合が低迷する主な理由として、少女たちは、伝統的な性別役割分担意識や、女性に機会が与えられていないこと、女性は非難されやすいことなどをあげ、変革を求める声も多く寄せられました。
そして、女性が増えてほしい分野として、72%の少女が政治分野を上げ、社会のしくみの改善を求めています。何より、自由回答に記載されたコメントの多さは、ジェンダー平等の早期実現を求める意思表示ともとれるものでした。
昨年度の調査と比べ、今年は自由記述に対して非常に多くの声が寄せられました。そこには少女たち一人ひとりの毎日の生活で起きたことや感じたことが詰まっています。彼女たちを過小に評価し、無力化し、可能性を奪う現実が多く記載されていました。
同時に、ジェンダー格差の解消を求める声も多くありました。スペースの関係から、この報告書には一部しか掲載できませんが、彼女たちの声を余すところなく届けるため、すべての意見をウェブページで紹介しています。ぜひ、一つひとつの声に耳を傾けてください。
少女たちの声は社会の鏡です。彼女たちの声一つひとつと、その声が生み出された社会のしくみや価値観の両面に注目していただくと、ジェンダー問題の構造に対する理解が一層進むに違いありません。声を理解し、伝えていくときにお役立ていただくことを願っています。
高校生による分析と報告会
今年の調査分析は2段階でおこなっています。まず、全国の女子高校生を対象にアンケートをとり、分析は当事者性をより重視し、女子高校生たちがその役割を担いました。全国から応募した9人のガールスカウトたちは、8月から2カ月間にわたり、調査分析をおこない、2020年10月11日、国際ガールズ・デーに報告会を開催しました。また、男女共同参画第5次計画案で募集されていた、パブリックコメントを提出しました。
- 報告会の構成
- メディアやインターネットから見たジェンダーとそ
- 日常の場面で「女の子だから」という言葉から受ける期待や制限
- 私たちの声-社会をよりよくするために私たちにできること
- ガールスカウトの高校生9人(福島県・東京都・静岡県・岐阜県・鳥取県・福岡県・沖縄県)
報告会の動画をYouTubeでみる
調査から分かった「自分たちが置かれている現状」を数字で示し、自分たちが実践している、社会をよりよくするための方法を伝えます。オンラインイベントを再度収録編集したものです。

差別があるという事実を知ってほしい
「メディアで男女平等に描かれているか」という問いに対する「わからない」という32%の意見。
メディアの当たり前は常識で、社会では確実に正解であるかのように扱われている。しかし、私たちはテレビやネットの作られたイメージや固定観念にとらわれてないだろうか。
「女の子だから」と何か理不尽なことを特に感じたことがない53%の女子高生。これは男女の区別や、社会の性差、差別がなくなっていることを表しているのだろうか。
アンケートの「差別を感じている」と答えた女子高生を少ないと感じるのか多いと感じるのかは人それぞれで、何を差別ととるかも人それぞれである。
しかし、「自分にとってこれが普通だから」という潜在的な意識が差別をなくせていない要因なのかもしれない。意識をしているから、差別が生まれるんだ。 そんな意見もあるかもしれないが、差別があるから意識せざるを得なくなっている事実を知ってもらいたい。
(17歳)

アイコン説明

キーワード
社会的・文化的につくられる性別のこと。性別による役割を期待されたり、評価される基準が決まったりしている。
学校には「公式のカリキュラム」として教育する側が明示的に教える内容以外に学校生活、学校制度、教師の言葉や態度などを通して、子どもたちが学びとっていく規範や価値観、信念などの「隠れたカリキュラム」が存在する。持ち物の色指定、性別の科目や活動、ステレオタイプに基づく声かけの違いなどを通して、子どもたちはいろいろなことを学び合い、影響を受けている。 16ページ
性差別には、敵意的性差別と善意的性差別の2つが存在する。敵意的性差別とは、女性に対して露骨で否定的な態度を示す性差別で、好意的性差別とは、一見女性に対して配慮のある好意的な態度を示しているようにみえるが、伝統的な性別役割を固定化するものである。 23ページ
自分では気付いていない、偏ったものの見方や思い込みのこと。 24ページ
調査概要
調査対象:全国の女子高校生
調査期間:2020年6月12日~7月14日
調査方法:インターネット回答 全47問(選択41問・記述6問)
回 答 数:700人 ガールスカウト会員468人(67%)・一般232人(33%)
男女共学 596人(85%)・女子校 98人(14%)・その他 6人(1%)
自由回答形式の質問に対する回答は、回答の要点ごとに集計、分析し分類ごとに主な意見を掲載しています。意見の掲載に当たっては、多くは原文のままとしていますが、一部には回答の本旨を尊重、反映できるように配慮しつつ必要に応じて言葉を追加したり、表現を整えたり、要約しているものもあります。
女子高校生調査2020の自由回答掲載ウェブページ
自由回答の集約サイトのリンクを掲載しておりましたが、現在は、公開を終了しております。
…続きは全文をダウンロードしてお読みください。
概要:「ジェンダー」に関する女子高校生調査2020 ~声をつなぐ~
「隠れたカリキュラム」に基づく声かけがどのようにされているかを把握しようと、「女の子だから」という言葉をキーワードに、日常で経験する差別や暴力について可視化しました。また、彼女たちの「ジェンダー平等実現に向けた問題意識」がどのようなものかがわかる内容となっています。
発行:2021年3月
定価:1,000円+税

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