自分のからだ
性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)
2022年3月に発行した調査報告書の一部を抜粋してご紹介します。
はじめに
ガールスカウトは、「すべての少女と女性が自分らしく生きられる社会」を目指して活動をしています。この度、同様の目的を持つ一般財団法人日本女性財団と連携し、世界各国と比べ大幅に遅れている「女性の健康に関する正しい知識や理解」を促進することを目的として、女子高校生を対象にアンケートを実施しました。
アンケート作成にあたっては、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が作成した『国際セクシュアリティ教育ガイダンス(5ページ)』に基づき設問を検討しました。しかし、ガイダンスでは5歳の子どもたちに教えることを奨励している項目であっても、日本の高校生年代には質問できないと判断するものが多く、日本の性教育が世界と照らし合わせていかに遅れているのかを認識する機会となりました。
高校生の回答からは、
- 「自分のからだ」について不安に思っていること
- 現在どのような性教育を受けていて、どのような教育を望んでいるのか
- 自分の将来についての意識
など少女たちの現状などを読み取ることができました。
ジェンダーの平等は、持続可能な開発を促進するうえでは欠かせません。少女と女性に対するあらゆる差別や暴力に終止符を打つためにも、包括的な性教育は非常に重要になってきます。そのため、今回の「ジェンダー」に関する女子高校生調査は、性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)をテーマとしました。
少女たちが「自分のからだ」について正しく理解し、自らの可能性を信じることができる環境を整えていくことは、性別に関係なく互いを尊重しあうことのできる明るい社会を作ることにつながるのではないでしょうか。少女たちが置かれている現状を改善していくために、この報告書をお役立ていただくことを願っています。
ジェンダーの平等と性と生殖に関する健康と権利
(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)
まず、ジェンダーの平等を実現するために、なぜ性と生殖に関する健康と権利 (セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 以下、SRHR)を理解する必要があるのかをお伝えします。
SRHRは、1994年にエジプト・カイロで開催された国際人口開発会議において提唱された概念で、これには以下の四つのことが含まれます。
- セクシュアル・ヘルス
自分の「性」に関することについて、心身ともに満たされ、幸せを感じられ、またその状態を社会的にも認められていること - セクシュアル・ライツ
セクシュアリティ「性」を自分で決められる権利のこと - リプロダクティブ・ヘルス
妊娠したい人、妊娠したくない人、産む・産まないに興味も関心もない人、アセクシャルな人(無性愛、非性愛の人)問わず、心身ともに満たされ健康にいられること - リプロダクティブ・ライツ
産むか産まないか、いつ・何人子どもを持つかをなど「生殖」に関することを自分で決める権利のこと
公益財団法人 ジョイセフ(JOICFP)ウェブサイト参考
ことばの説明
包括的性教育(1)
ジェンダー平等や性の多様性を含む人権尊重を基盤とした性教育のこと。包括的性教育の目的は、性に関することのみでなく次のことを学ぶこととしている。
- 生涯を通して自らの権利を守ることの大切さを知ることと知識や態度等を身に付けさせること
- 自らの健康・幸福のための選択を自分で決められるようになること
- 多様性を認め、個々を尊重すること
- 人間関係を構築することの大切さ、個々の選択が自己や他者に与える影響への気付きを得ること
性の自己決定
性にかかわる事柄について、自らの責任で決定できること。性行動や性認識は、自分自身のものであり、自分で培っていくもの。
国際セクシュアリティ教育ガイダンス(2)
『国際セクシュアリティ教育ガイダンス(以下ガイダンス)』は、学校内外における包括的性教育のプログラム教材を開発し実践することを手助けするためにユネスコにより作成された。ガイダンスでは、科学的根拠に基づき、各地域の実情に合わせた信条や価値観・態度・スキルなどの要因を考慮しながら働きかけるために、論理的に設計されたプログラムの必要性を強調している。合わせて、すべての人が健康でウェルビーイング(幸福)となれるよう、数多くの国際的な人権に関する文書(世界人権宣言、子どもの権利条約、経済的・社会的および文化的権利に関する国際規約、女性差別撤廃条約、障碍者権利条約など)を基盤として作られている。子どもや若者が自らの健康やウェルビーイング(幸福)となる権利を知るとともに、他者を理解し権利を尊重することができるよう、5~18歳程度の若者を対象にキーコンセプト、トピック、学習目標に分けて書かれている。
キーコンセプトは、以下の8項目で構成され、初等教育・中等教育レベルのが学習者を意図して四つの年齢グループ(5~8歳、9~12歳、12~15歳、15~18歳以上)に分けて学習目標が設定されている。
- 人間関係
- 価値観、人権、文化、セクシュアリティ
- ジェンダーの理解
- 暴力と安全確保
- 健康とウェルビーイング(幸福)のためのスキル
- 人間のからだと発達
- セクシュアリティと性的行動
- 性と生殖に関する健康
それぞれのキーコンセプトに2~5のトピックがあり、年齢グループごとに知識、態度、スキルを基盤とした学習目標で構成されている。
月経前症候群(PMS)(3)
生理の前になると決まって不快な症状が現れ、日常生活に支障をきたす。多くの場合、生理が始まると症状が軽くなり消失する。症状があっても、日常生活に支障のない程度のものは、月経前症候群(PMS)と診断されないこともある。
月経前不快気分症候群(PMDD)(3)
月経前症候群(PMS)の症状のうち、ココロの症状が特に悪化して日常生活に支障をきたすような症状を月経前不快気分障害(PMDD)という。
性的同意年齢(4)
キスしたり、裸にして体をなめたりなど、“性交”以外の性的行為に対して同意する能力があるとみなされる年齢
性交同意年齢(4)
性交することについて、同意する能力があるだろうとみなされている年齢
(1)公益財団法人日本女性学習財団ウェブサイト
(2)国際セクシュアリティ教育ガイダンス
(3)バイエル薬品株式会社「生理のミカタ」ウェブサイト
(4)NHKクローズアップ現代 みんなで”プラス”に変えるVOL.143
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概要:「ジェンダー」に関する女子高校生調査2021 自分のからだ
一般財団法人日本女性財団と協働で、性と生殖に関する健康と権利(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)をテーマに女子高校生たちの声を集めました。
発行:2022年3月
定価:1,000円+税

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