半導体とエンジニアリングについて学ぶ3日間! Chip Camp in 広島を開催

わたしたちの活動#自己肯定感,SDG5,ジェンダー平等の実現,少女たちの声

2023年3月31日(金)~ 4月2日(日)3日間にわたり、中学生対象のSTEM教育プログラム「Chip Camp」を開催しました。Campでは、全国から集まった58人の小学6年・中学1・2・3年生のガールスカウトたちが、半導体とエンジニアリングについて学びました。Campの様子をご紹介します。

Day1

セッション1 粘土でウェハを作ろう

マイクロンメモリジャパン株式会社の金子幸治氏から、「STEM教育とは」「半導体とは」というお話を伺ったあと、粘土を使って実際のウェハ※はどのように作られているかを疑似体験しました。
※半導体を作るのに必要な、シリコン単結晶でできた円盤状の板のこと

セッション2 アイデアソンタイム

アイデアソンとは、アイデア(Idea)とマラソン(Marathon)を掛け合わせて造られた造語で、特定のテーマについてグループごとにアイデアを出し合うものです。
テーマ「未来の学校」についてパトロール(班)で考えました。
広島大学の鈴木准教授ご指導のもと学生メンターの助言を得ながら、理想の学校にはどんなものが必要かを考えました。短い時間でのディスカッションでしたが多種多様の意見が出てきました。

Day2

セッション3 0と1 コンピューターの世界 

 

広島大学の川田教授からの指導で、コンピューターの中は2進法で表されることを知りました。通常、高校や大学で習う内容ですが、体験を通して学ぶことにより小・中学生の参加者も理解することができ、NOT、AND、OR演算子を使って自分たちが計算機の中身になって、みんなで協力しながら問題を解きました。

Doodle botの組み立て

さあ、ロボットの組み立てです。どうすればまっすぐ進むようになるのか、試行錯誤、微調整を重ねながら1人ひとりが自分だけの「セミ」のロボットを作り上げました。

セッション4 ラズベリーパイでDoodle botを動かしてみよう

午前中に作り上げた「セミ」のロボット、今度はプログラミングです。学生メンターの方の協力を得ながら配線をしたりプログラミングしたりして完成させました。

セッション5 アイデアソンタイム

 

初日に考えたアイデアを基に未来の学校についてさらに話し合いをしました。
発表の際には評価基準に従って他のチームの審査もおこないました。

Day3

マイクロンメモリ ジャパン(株)広島工場/広島開発センターへ移動

セッション6 女性リーダーと女性エンジニアから話を聞こう

「わたしの歩む道」をテーマに3人の話を聞き、積極的に質問もおこないました。3人のお話には、「挑戦すること」「失敗を恐れずやってみること」「好きなことを極めること」、という共通点がありました。このメッセージは、少女たちに大きな影響を与えました。

マイクロンテクノロジー社
Global Business Partnering Vice President 中西詩絵 氏
マイクロンメモリジャパン株式会社  Na Yunju氏
マイクロンメモリジャパン株式会社  景山理菜氏

セッション7 工場クリーンルーム見学

防護服に身を包み、クリーンルームの見学をしました。1日目に体験したウェハが実際に作られる様子を見ることができました。規模の大きさや高速で走り回る機械に圧倒されました。

参加者の感想

  • 学校で普通に学べないようなASCIIコード、NOT・AND・OR演算子、Doodle Bot作成などを学べました!(中学1年)
  • 1日目にやった二進数の計算が一番印象に残っています。こんな計算があるんだなと思いました。とても面白くて、もっとやりたいと思いました。(中学1年)
  • はじめは0と1だけを使う2進数を理解するのが難しかったけれど、広島大学の方に質問し教えてもらうと、考え方が分かりとても嬉しかったです。演算子は3種類あり、それぞれの違いを人間計算機のゲームを通して学ぶことができました。(小学6年)
  • はじめてラズベリーパイピコを使ったロボットを作りました。歯ブラシやフェルトの位置を何度も実験し、ロボットが真っ直ぐ進むよう工夫しました。どのセッションも本当に楽しかったです!!!(中学3年)
  • STEM教育や理論ゲート(NOT演算子・AND演算子・OR演算子)など知らないことを知れたし、アイデアソンでは、コンピュータでできる新しいことを考えました。私たちのグループは「忘れ物防止タッチパネル」を提案しました。上位3位にはなれなかったけど考えるのが楽しかったです。(小学6年)
  • 女性リーダー・エンジニアの話では、どの方も挑戦することの大切さや視野の広さなどを大切にされていて、これからの人生の参考にとてもなった。自分も新しいことに挑戦してみようと思った。(中学2年)
  • 私は基本文系で、日本神話などの古典が好きなのですが、理系に挑戦してみるのもいいかもしれないなと思いました。(中学1年)
  • 広島大学の人に話を聞いたり、マイクロンの人の話を聞いて、もっと知りたいと思ったり、楽しそうだと思いました。科学者になりたいと思いました。(中学1年)
  • 今回のキャンプで自分が将来どんなことをしたいか、どうしたら理想に近づけるか、うっすらだが自分の中でイメージがつきました。(中学2年)

女子中学生にSTEM教育を提供する必要性

ガールスカウトでは、少女と女性の可能性を最大限に伸ばし、一人ひとりの力を伸ばす実践的な教育プログラムを提供していますが、STEM分野に特化したプログラムはまだ少ない現状です。また、2019年に実施した女子高校生調査*では、93%の少女が「女の子は数学や理科ができなくてよい」*と言われた経験がないにもかかわらず、大学での専攻分野の女子の割合は、理学が28%・工学が15%と著しく低く、専攻分野により男女の偏りが見られる現状があります。(文部科学省の学校基本調査 平成30年度より)また、77%の女子高校生が「ビジネス界に女性のリーダーが少ない」*と言っています。
今回開催したChip Campは、進路選択がまだ明確になっていない中学生の女子を対象として、STEMに関するプログラムを提供しました。また、女性リーダーや女性エンジニアの話を聞く機会をつくり、「女の子だから」とあきらめるのではなく、やりたいことに挑戦することで可能性が広がることを知る機会をつくることができました。そして、広島大学の学生18人とガールスカウトのユース7人のサポートが素晴らしく、少女たちのロールモデルとなりました。

私たちは、これからもこのような機会を継続的に提供し、少女と女性の可能性を最大限に伸ばす挑戦を続けます。

*『「ジェンダー」に関する女子高校生調査報告書2019』(2019年10月ガールスカウト日本連盟発行)

*Chip Campとは?

米国の大手半導体メーカー マイクロンテクノロジー社が設立したマイクロン財団が、アメリカで開催している半導体技術とエンジニアの仕事に関する実践的なSTEM教育プログラムです。 この度、日本でも同様の機会を提供いただけることになりました。

ガールスカウト日本連盟では今年度、マイクロン財団とともに少女たちに継続してSTEM教育(半導体とエンジニアリング分野)をバッジプログラムとして提供していく予定です。ガールスカウトでは、2018年からマイクロン財団にSTEM教育のための資金をご提供いただき、プログラムを開催しています。今回は、初めて宿泊型(舎営)で2 泊3日、国立江田島青少年交流の家にて実施しました。

広島大学との共同研究契約について

実施にあたっては広島大学のご協力をいただき、学生の皆さんにメンターとして中学生たちをサポートしていただきました。広島大学とガールスカウト日本連盟は、理系女子育成のためのSTEM教育教材およびカリキュラム開発およびその有効性を検証するための共同研究契約を締結しています。

主催:公益社団法人ガールスカウト日本連盟
協賛:マイクロン財団
協力:広島大学