Girls Going Tech in 広島「コンピューターの世界を知ろう」開催報告

わたしたちの活動#STEAM,#体験活動,SDG5,ジェンダー平等の実現,理系

2025年7月、ガールスカウト日本連盟はマイクロン財団のご支援、広島大学のご協力をいただき、女子のためのSTEAM教育*事業「Girls Going Tech in 広島」を開催しました。
*STEAM教育:Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsを統合的に学習する、理数教育に創造性教育を加えた教育概念

|実施日|2025年7月27日(日)
|会 場|カトリック観音町教会(広島市)
|講 師|広島大学 大学院 人間社会科学研究科 川田和男教授、学生のみなさん
|参加者|20人

9都府県からジュニア(小学校4年生から6年生)20人が参加しました。
広島大学大学院 人間社会科学研究科 川田和男教授が開発したカリキュラムによって、2進数の数の数え方について体験から学び、障害物に沿って進むロボットを製作しました。
将来技術の教員を目指す9人の学生が、プログラムをサポートしてくださいました。

先生、学生のみなさんの自己紹介で、プログラムは和やかにスタートしました。
前半は、2進数の数の数え方について学びました。

これは2024年秋に川田教授により、ガールスカウトの団で学べるように開発された教材「バイナリーバッジバッジ リーダーズガイド」を使って実施できるプログラムです。
普段の生活ではおなじみの10進数とは何が違うか、どのような場面で役に立っているか、高校で扱う数学で教わる内容を学んでいくことになりました。

2進数の数の数え方

小学校で習っている「10進数」は、ひとの手の指が10本であることから、始まったとされているそうです。一番身近な数の数え方です。

次に教わるのは「60進数」です。
これは、時間を表すときに使いやすく、数を数えるときと異なるルールになっています。

さて、2進数は0と1しか使いません。
0,1と数えたら、そのつぎには位が1つ上がります。そうすることで、なんと同じ10本の指を使って1024まで数えられてしまうのです!

この数え方がなぜ便利なのかというと、コンピュータに指示を伝えることができるからです。

川田教授は「スマホやパソコン、自動車やあらゆる製品には半導体メモリチップが入っていて、コンピュータを動かしていますが、そのメモリチップの中には、数えきれないほどの膨大な情報を、2進数の形で入れることができるんです。」と、あらゆる電化製品に組み込まれている「メモリチップ」について教えてくださいました。
すると視察に来てくださった半導体メモリ製造企業であるマイクロンメモリ ジャパン株式会社の中西氏が「今日は実物を持ってきました。みなさん、手に取って、見てみてください」と実際のメモリチップを見せてくださいました。

こんなに小さいものが、スマホやコンピュータを動かしていることに、みんな興味津々で不思議そうです!

続いて、電気回路のON/OFFと数字の0/1を連動させ、0と1の組み合わせでできる3つのルールを学びました。

「コンピュータにどうやって命令を伝えるか。今からルールを説明します。」

まずは【NOT】。
これは、入力された数値と逆の答えを返す、というルールです。入力が1の時、答え(出力)に0を返す、入力が0の時、答えに1を返す、というルール。
どんな時に使えるでしょうか?
学校で習った電気のスイッチのことと結びつけて、授業は進みます。

【OR】のルールは、2つの入力のうちどちらか一方が1の時、答え=出力に1返す。

【AND】のルールは、2つの入力が1と1の時、答えに1を返す。0と0の時、答えに0を返す。0と1の時、答えに0を返す。というルールです。

3つのルールを一通り学んだところで、0と1の計算機になり、チームで協力して2進数の計算をしました。
4人が1チームになって座っている机の上に、計算回路シートが置かれます。
4人は一人一人役割を持ち、それぞれが、「0」「1」と書かれたカードを持ちます。
一番最初の演算子を担当する人は、問題(入力に入った数字)を見て、自分の計算結果のカードを回路の上に置きます。
次の回路の人は、前の回路に置かれた数字を見て、自分の計算結果のカードを回路の上に置きます。
例えば、演算子【NOT】を担当する人は、前の人の結果が0の場合、自分の回路の上には1を置きます。演算子【OR】を担当する人は、2つの回路からくる結果を見て、結果が1と0の場合、自分の回路には0を置きます。

初めて習ったばかりのルールを実際にやってみると、おっかなびっくりでしたが、講義で教わったテキストを見ながら自分で答えを出し、回路をつなげました。
何度もやるうちにチーム全体で自信がついて、「はい!」「はい!」と勢いある「できました!」の合図があちこちから聞こえてきました。

戸惑いもありましたが、広島大学の学生が入力のルールや桁の考え方を丁寧に教えてくれ、何度か繰り返すうちにルールを理解し、徐々に早く回答できるようになりました。チーム全体で協力して一つの答えを出すおもしろさも味わいました。
休憩時間には、広島県連盟からいただいた広島銘菓に舌鼓。周りの仲間や、先生、大学生とのおしゃべりも弾みました。

ロボット製作

後半はロボット制作です。
「今からみなさんロボットを作ります!」という先生の声にみんな嬉しそう。

学生スタッフの「順番に材料を取りに来てください」という声で材料スペースを見てみると、色とりどりのカラフルなパーツが並びます。
毎回プログラムをブラッシュアップする学生達の細やかな工夫で、「どれにしよう」「この色もかわいい」と、材料選びから楽しみました。

先生がスクリーンで組み立て手順を示したものを見ながら、電池ソケットやケーブルを基盤に取り付けていきます。
今回は、歯ブラシのブラシを足にして進み、センサーで本体の周りにあるものを感知しながら進むロボットを製作。
見本写真と手元を見比べると、部品の取付位置が逆になっていることも多々発生。作業が進むにつれ、あちこちで失敗の声も聞こえてきます。

「線はどこにつけるの?」学生が丁寧に正しい向きを教えたり、取付順序の確認をうながします。

「あれ、まっすぐ進まない。ずーっと右に曲がっていっちゃうよ」
「むこうのロボットとぶつかっちゃうよー」
うまく行かない状況に
「ブラシの角度が、左右で違うね。こっちの向きを変えてみようか?」と、先生と学生が一人ひとりにアドバイスをし、試行錯誤を繰り返して、理想のロボットに近づいていきます。

歯ブラシのブラシで進むロボットが完成しました。どれも動きが違っておもしろい! 自分だけのロボットです。

ガールスカウト日本連盟 篠原理事は、参加した少女たちにこんなメッセージを届けました。
「STEAMの分野は、みなさんの将来を広げるでしょう。ぜひ自分の団に帰って、今日学んだことを団のみなさんに伝えてください。STEAMプログラムに取り組む人が増えることを願っています。」
新しい体験をして以前より算数や科学に興味を持ち、さまざまな地域の新しい友達と出会い、充実した3時間でした。


参加者の声

「2進数の足し算が一番心に残った。」
「コンピュータになってみよう! のところが良かった。」
「ロボット作りが楽しかった」
「ロボットがまっすぐ進んで嬉しかった」
「ロボットがまっすぐ走らなくて難しかったけどおもしろかった」
「はんどうたい(メモリ)をじかにさわれたことが一番心に残った」
「友達いっぱい増えた」
「苦手だった理科が少し好きになりました」
「工場でロボットを作ると、1台に何分ぐらいかかるか気になる。」
「もっとコンピュータのことを知りたい」


ガールスカウトのSTEAM教育

理数分野の職に就く女性の割合が低いことから、幼いころから専門的に学べる機会を設け、好奇心を持続する機会をつくるために、ガールスカウトではSTEAM教育プログラムを開始しています。
2進法、ロボットを切り口としたコンピューターの仕組み、半導体技術、サイバーセキュリティについて、企業と大学の協力を得ながら学びを広げています。

ガールスカウトのSTEAM教育

以前の活動報告より
2025年4月1日 Chip Camp in 奈良
2025年3月2日 Girls Going Tech in 奈良

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