Chip Camp in 奈良開催報告〈part3〉

わたしたちの活動#STEAM,#体験活動,SDG5,ジェンダー平等の実現,ロールモデル

2025年4月、ガールスカウト日本連盟はマイクロン財団の支援、広島大学の協力を受けて、女子のためのSTEAM教育*事業「Chip Camp in 奈良」を開催しました。
*STEAM教育: Science、Technology、Engineering、Art、Mathematicsを統合的に学習する、理数教育に創造性教育を加えた教育概念。

実施日|2025年4月1日-4月3日
場 所|奈良ユースホステル、奈良先端科学技術大学院大学
講 師|広島大学 大学院 人間社会科学研究科 川田和男教授、鈴木裕之准教授
    奈良先端科学技術大学院大学 塩﨑一裕学長、井上美智子教授
    マイクロンメモリ ジャパン 金子幸治氏、田中大史氏、ナ ユンジュ氏

5回目の開催となる今回は、14都府県から59人の中学生、高校1年生が参加しました。本ブログでは、3日間の豊富なプログラムの中から今回ならではの取り組みにハイライトし、3回に分けて報告します。

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最終日は、奈良先端科学技術大学院大学を訪問し、マイクロンによる半導体のレクチャー、奈良先端大のキャンパスツアーをおこないました。

半導体の世界

マイクロンメモリジャパンのエンジニア ナユンジュさんより、半導体の性質や、半導体の特性を生かして情報を記録する仕組みを教えていただきました。
「ASCIIコード」や「bit とbyte」など難しい部分もありますが、レクチャーの途中ではところどころでクイズが出題され、正解した人にはプレゼントもあり、楽しみながら、よく聞き、関心を向ける工夫をしていただきました。

半導体の製造プロセスという、さらに専門的なレクチャーを田中さんからしていただきました。
メモリチップとなる半導体ウェハに、今までよりさらに小さく細かい回路を書くために、「書き込む」のではなく、照射技術で転写するという「EUV露光技術」について解説されました。この技術のおかげで半導体メモリチップはより精度が高まり、あらゆる製品に求められる性能となります。この性能は、人工知能の性能に関わってきます。

「マイクロンはAIの3分の1を動かしています。自動運転、医療、気候と災害、製造、学習・・・生活を支えるあらゆる分野に関わります。半導体が無いとスマホが黒電話、パソコンがそろばん、手術が祈祷になってしまいます。これからの人工知能は自分で学習し、自分で決定し、行動します。より正確で高度な対応をします。そのために、より高性能な半導体メモリチップが必要なのです。マイクロンは日々技術革新をします。」

最先端の研究現場へ

奈良先端科学技術大学院大学の見学の最初は、井上教授のお話から始まりました。

半導体回路の分野にも関わられている情報科学領域・ディペンダブルシステム学 井上美智子教授からは、「大学院の先生は何をしているのか?」というテーマでお話を頂きました。

「女性、男性に関わらず、研究の道は開かれています。自分に何が向いているかは、やってみないとわかりません。ぜひ様々な分野に興味を持って、興味を持ったことにトライしてみてください。」

このほど「令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 研究支援賞文部科学大臣賞」を受賞された、マテリアル研究プラットフォームセンター 技術専門職員の西川嘉子さんからは、大学院の研究環境を作り、研究を支える技術職員のお話を伺い、研究者のアイデアをカタチにする素晴らしいお仕事だということ、1つの研究の裏には、たくさんの人のチームワークがあることを学びました。

2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が使用した顕微鏡が展示されていたり、電子書籍をメインとし、どんな時間にも学生が利用できるスマートな図書館があったりと、キャンパスは見どころ満載です。
研究施設では、不思議な性質を持つ素材開発や真空環境、想像を超える小ささを見せる顕微鏡など、最先端の研究と設備を見学しました。

最後に、学長からお言葉をいただきました。

「奈良先端科学技術大学院大学は、日本で最も若い大学院です。私たちは、多様性を大切にし、さまざまなバックグラウンドの研究者を支援しています。
皆さんへのメッセージは、Outglow your limits. (限界を越えよう)です。」


3日間、STEAMを幅広く体験するCampが終わりました。ここから自分の興味の種を見つけ、育てていくことを願っています。

今回の運営に参加したユース年代のスタッフも、「自分が中学生、高校生の時にこんな事業があったら、ぜひ参加したかった。新しいことばかりでワクワクした。」「テクノロジーの勉強になった」「先生やエンジニアのお話が新鮮で、知らなかったことばかり。一緒に学べてよかった」と充実した様子でした。

ChipCamp参加者の声

  • 将来のAI社会について考えることが出来た。
  • 今まで半導体について詳しく知らなかった。今回の活動を通して半導体についてだけでなく、今まで知らなかったような、半導体を作ることや半導体を使うこと、半導体を研究することについても詳しく知れてすごく楽しかった。3つの団体からとても多くのことを学べて良かった。
  • 内容が難しかったけど、二進数を自分達で体験した事とぶつからない車がおもしろかった。
  • 普段の生活では知れないような、プログラミングなどの知識を得られて、理系に興味をもつことができた。
  • ただ講座を聞くだけじゃなくて実際にやってみたり、グループトークをしたりして、分からないところを少なくできた。
  • 普段学ぶことないことを学べた良い機会で、将来について再度考える機会になった。
  • 理系が苦手なのでついていけるか心配でしたが、丁寧にわかりやすく説明してもらえて楽しく参加することができました。二進法は最後までモヤモヤしました。しっかり復習したいと思います。
  • 先生が話していた理系と文系の考え、どちらともが必要という発言が印象的でした。私は、やりたいことも無く、数学が他の教科よりはできるという理由で理系の大学を、目指しています。そして、理系の方が医者など国家資格が取れ、生活が安定すると思い、勉強しています。だから、先生がこう発言をした時、理系に行かないといけないという私の思い込みみたいなものが少しなくなって、先生の意見にとても共感しました。
  • 大学の学校内の見学でレーザーで物質をみることができる機械に感動した。
  • 障害物にぶつからない車を作ったことが一番楽しかったです。ラズベリーパイと美味しそうな名前でなんのことだろうと思っていましたが、要になる重要なプログラムだとわかり賢くなった気分です。このようなものを作る体験、経験したことが一番印象に残りました。
  • 0と1だけでAIが判断していると知って少し驚きました。
  • 直感だけやみんなが言っていることが正しいとは限らず、それを証明できるのが理系、科学だということが一番記憶に残りました。
  • 機械を理解したりするのが楽しかったので、機械などからデータを収集して、他の人に役立つような仕事につきたいです。人と関わるのは大変な時や辛い時もあるけど、楽しい方が大きいので、人に触れ合いながら、技術を利用して人を助ける仕事につきたいです。

参加者保護者の声

  • 内容は難しかったようですが、全国の仲間とつながり、よりガールスカウトが好きになったようです。
  • いつも引っ込み思案の娘が、とても楽しんだ様子で、安心しました。
  • 本人が喜んで帰ってたくさん報告してくれたので、参加できてよかったと思います。新しい体験をしたこと、全国の仲間と知り合えたこと、貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。

» ガールスカウトのSTEAM教育への取り組み


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