未来を変える少女たちへ

色えんぴつ

女性の活躍が推進されているとはいえ、女性の社会的立場はまだまだ男性とは同等とは言えないのが現状です。その中で、世界で活躍する女性のロールモデル(手本)として国連広報センター所長を務めている根本かおるさんに2019年11月13日、お話を伺いました。根本さんの活躍はさまざまなメディアでもすでに紹介されていますが、今回のインタビューでは差別のない社会を目指すロールモデルとして、現在のご自身に至るきっかけ、ジェンダーの問題について、そして、これからの時代を担う少女たちに向けてメッセージをいただきました。

国連広報センターオフィスにて

どのような経緯で世界へ目を向けるようになりましたか?

幼少のころ、ドイツで過ごし、言葉が通じない、肌の色が違うことから受ける差別により、子どもながらに人権の大切さを感じました。また、当時のドイツはまだ東西に分かれており、一つの街が壁で分断されていることを目の当たりにし、国際政治が人々の生活を翻弄することを痛感しました。そこから、大学では国際法を学び世界への関心を持つようになりました。
新卒でテレビ局に入社した当時の就職事情では、民放キー局で新卒女子の採用は一社を除きアナウンサーのみでした。男女で選べる職種が違うことや男性優位なメディアの世界での経験から、社会のなかにある女性差別や理不尽を感じましたが、次年度(1986年)に男女雇用機会均等法が施行され、こうした区別も徐々になくなっていきました。その背景には、国連総会で採択され1981年に発効した女子差別撤廃条約を日本が1985年に批准したことがあると知り、国連での議論が自分たちの生活にも繋がってくるのだと、国連を意識するようになりました。
このように、自分にとって子ども時代、大学時代、新卒採用で就職したばかりのころに世界と自分のつながりを感じるようなことがいろいろとありました。

ジェンダーの問題についてはどのように考えていますか?

大学時代には同じ学費を払いながら、男女学生の扱われ方の違いに疑問をもちました。
また、日本には社会による性別に対するステレオタイプなどの刷り込みがあると感じています。
日本では特に政治でのリーダーシップ、理系の研究者、役員比率において女性の割合が圧倒的に低く、メディアにおいては伝える側に女性が少ないことで女性の視点でとらえられるニュースが伝えられていません。ニュース項目を決定できる立場に女性が増えることが必要だと思います。
世界経済フォーラムが出したグローバルジェンダー指数(2019年は12月17日に発表)によると、今のままでは世界レベルで職場でのジェンダー平等が実現されるには200年以上かかるそうです。機会均等によって女性にも機会は与えられても、その機会に対して手を挙げられるだけの資質と経験を備える女性の数が少ないため、包括的に結果均等を求めないとこの問題は変わらないと思います。

ジェンダーの問題などについて語る根本さん

これからの時代で少女たちが活躍していくために必要なことは?

例えば、最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユサフザイさんは普通の少女です。お父さんは教育に理解がありましたが、お母さんは教育を受けていません。彼女が他の人と違ったのは、自分の問題意識を言語化し、それを恐れず怯むことなく伝え、そして人を巻き込んで伝え続けていったことです。
自分が何をやりたいのか、何に問題意識を持っているのか、それは一人ひとりの少女が持つ可能性だと思います。その「何」を考え、気づきを導くような、あるいは引き出すように教育現場や指導者はもっと指導するとよいのではないかと思います。もし、まだ自分にとっての「何」がわからない人は、まず自分の思いを言葉にすることから始めてほしいです。物事をやり通すにはやはり「楽しさ」や「ワクワク感」も大切です。人それぞれ楽しいと思えるものと問題意識を言語化することで意識に定着させることができます。言語化することは思っていることを形にし、それに自分はどう関わり、どうはぐくんでいくのか ―― その連続だと思います。国連というバックグラウンドが多様なチームで働くために、私自身も言語化することで物事をどう相手に伝えるかを日々考えています。

ガールスカウト100周年ロゴを持って

ガールスカウト100周年によせて

ガールスカウトは2020年に100周年を迎えますが国連は75周年を迎えます。
国連では100周年を迎える2045年に向けて「国連が100周年を迎える2045年にどんな社会になってほしいか」「それに向けて問題なく順調に進んでいるだろうか」「自分に何ができるだろうか」の3つのことについて世界中で議論してもらいたいと思っています。100周年を迎えるガールスカウトの皆さんにも是非議論していただき、その声を国連に届けてもらいたいです。議論の際に羅針盤の役割をしてくれるのが2030年をゴールにした「持続可能な開発目標(SDGs)」です。その中でも5番目のジェンダー平等(SDG5)は、それを入り口としてほかの目標に横断的に関わる、すべてのゴールの礎になる重要なものです。SDGsを通じていろいろな問題にジェンダーが関わっていると広い目を持つことができるので、ぜひSDGsを一つの羅針盤に議論してもらいたいです。
日本人はあまり本音を言わず、思っていても口に出さないという文化がありますが、嫌なものは嫌と言えることは和を崩すことではなく、前に進むためには必要なことだということも意識的に考えて議論してもらいたいです。ガールスカウトの少女たちにとっては、ガールスカウトという場所が何を言っても仲間外れにされたりすることのない、安心して自分を発信できるセーフティゾーンになればいいと思います。

お話を伺って

昨今、表現力・対話力の大切さが教育をはじめさまざまな社会の現場で強く求められています。根本さんのお話を伺い、まさに表現することの大切さを伝えてくださったことが印象的でした。思いを伝えるためには、まず言葉として形にすること、形にすることで思いの中にあるものが見えてくるということだと思いました。それは自分自身が見えてくるということではないでしょうか。
根本さんがくださったメッセージは、自分が「何」をやりたいのか、「何」に問題意識を持っているのか、がまだわからない少女たちにとっても、自分の可能性を導き出すための方向を照らしてくれる灯りのような、貴重なアドバイスとなりました。