指導者が学ぶ少女たちのためのSTEAM教育プログラム

わたしたちの活動#STEAM,#体験活動,SDG5,ジェンダー平等の実現,ロールモデル

2025年9月、ガールスカウト日本連盟はマイクロン財団の支援、広島大学の協力を受けて、ガールスカウトの指導者を対象としたSTEAM教育プログラムの実施支援研修を開催しました。

ガールスカウト日本連盟がSTEAM教育に力を入れ始めた背景

日本のSTEAM分野における女性の割合は、OECDの調査(2025年※1)では38カ国で最下位となっています。
また、ガールスカウトの調査(2020年)では「理数系は男子」と思っている女子が48%に達しました。

日本の女子の理数系の学力は世界トップレベル(PISA2022※2)であるにもかかわらず、約半数の少女たちが苦手意識を持っていることが明らかになっています。
また、日本の情報通信業で働く女性の割合は30.1%と、全産業と比較して低水準※3です。

これらの背景から、少女たちが理数分野への関心を持ち、進路の幅を広げるためにSTEAMに関する教育プログラムを導入しました。

※1 図表でみる教育2025: 日本
※2 【資料】 PISA2022 主要3分野の調査結果概要
※3 女性デジタル人材の育成について

STEAM教育のひとつ「バイナリーバッジ」

ガールスカウトが展開しているSTEAMバッジには、主に以下の3つがあります。

  • サイバー・スマートバッジ インターネットリテラシーを学ぶ
  • ロボティクスバッジ ロボット工学を学ぶ
  • バイナリーバッジ 2進数とコンピュータを軸に、情報分野を学ぶ

バッジとは、知識や技術を得た証として取得し、身につけて示すことで学ぶ意欲を促す教育システムです。

100年続くガールスカウトのバッジの魅力

バイナリーバッジの目的は、少女たちが身近なものをきっかけに、情報分野に興味を持ち、体験を通して情報(コンピュータ)の基礎を学ぶことです。

コンピュータの世界で用いられる「2進法」に関して、生活の中にある「時計」や「人間の手」などと比較し、目に見えるものから理解を促します。そしてシンプルなロボットの製作体験を通して、2進法がスイッチの役割を果たし、暮らしを支えるコンピューティングにつながることへの理解を手助けします。小学生の発達段階をふまえて、「具体的なもの」をスタートに「抽象的なもの」を考えるカリキュラムとしました。

バイナリーバッジ 赤1

テンダーフット(就学前1年)、
ブラウニー(小学1年から3年)が取り組み、
取得できるバッジ。

バイナリーバッジ 青2

ジュニア(小学4年から6年)が取り組み、
取得できるバッジ。

 

研修の実施の背景

2023年からSTEAMバッジプログラムを開始し、順次リーダーズガイド(指導者向け研修教材)をリリースしましたが、全国の活動グループにおいて、実施には二の足を踏む指導者が多く、子どもたちは関心があるものの、すぐに実施する状況には至りませんでした。

原因は、指導者の苦手意識にありました。
そこで、教材を開発した広島大学 川田教授にご依頼し、オンラインでの指導者研修開催に至りました。

開催にあたり、日本連盟 教育・指導者 担当の新 香織(あたらし かおり)理事が以下のことを述べました。

「ガールスカウト日本連盟では、今の社会に必要な力というものを少女たちが身につけられるようにさまざまなプログラムを提供しております。中でも近年、特に力を入れたいと思っているのがSTEAMという分野です。科学、技術、工学、芸術、数学といった領域で体験を通してはぐくまれる力が、これからの社会、未来を生きるうえで欠かせないスキルとなります。またこの取り組みを通して、自分で考えることや、協力して進めていくこと、新しいことに挑戦する力もはぐくまれます。
本日のプログラムは、少女たちの可能性を広げるためにまず指導者がプログラムを進めるためのポイントを確認し、少女たちにどのような働きかけをしていくとよいのかを学ぶために開催します。
ガールスカウトの指導者がまず一緒にやってみようと思えることが、この分野を強化していく一歩と考えております。どうぞリラックスして、新しい世界に触れる時間を楽しんでください。」

研修開催概要

実施日 2025年9月28日
参加者 全国26都道府県のガールスカウトの指導者 95人

[内容]
STEP1 いろいろな数の数え方
STEP2 2進数について、論理演算子について 
STEP3 論理演算子を使用して動作する懐中電灯の作り方 
STEP4 2進数計算機になってみよう

2025binary_1.jpgQ. 進数って何?と聞かれたらどんな説明をしたらよいでしょう?
A. 川田教授「一定のルールで進む数、と説明できると思います。」

 

Q. 今説明いただいた2進数を小学校1年生に教えるのはどうしたらよいでしょうか?」
A. 川田教授「コンピュータの世界は数字が0と1しかないので、この桁の箱の中に入る数字は無いか1しかなくて、これがあふれたら次の桁に上がるという話を具体物を使って説明すると分かるのではないかと思います。」

研修をご担当いただいた川田教授

子どもたちに教えるときに先生が心がけていらっしゃるポイントを教えていただきました。

「子どもたちの知らない知識を教えたくなるんですけれど、子どもたちが自信を持って自分から次々と新しいことをしようとするという態度を育てるならば、ヒントは言うけれど、答えは先に言わないというのがすごく重要だと考えています。」

「無理に理解をさせなくてもいいんじゃないかなと思います。経験をすることが重要じゃないかと思います。」

「情報の授業をしているとコンピュータやAIの発展の話につながっていきますが、大切な点は、我々人間は情緒ーつまり喜怒哀楽を感じる力を持っていることです。
それは今のコンピュータでは絶対にできないことです。
ガールスカウトのみなさんはキャンプや自然とともに過ごす活動を普段からされていますが、そういった活動で情緒を鍛えて、基礎となる知識を持って、コンピュータを扱うことができれば、よりよい社会になると考えます。指導者のみなさんが新しい知識を伝えていただいて、自信をつけていただければと思います。」

参加者の声

バイナリーバッジに取り組むことによって、子どもたちが知らない世界に興味を持って、自身で知識を学んでいく「きっかけのひとつ」となれば良いのだと思い、一緒に学んでいくという姿勢で取り組めばよいと気づきました。

苦手意識を持っていた私が、おもしろいかも! もう少し深く知りたい! と思えるようになりました。そんな気持ちを子どもたちに伝えられたらと思います。

川田先生の情緒のお話は、STEAMのArtの部分に関するヒントだと思いました。Binaryの考え方は、もしかしたら「数学が苦手!」と思い込んでしまっている大人のほうが、ハードルが高く感じられるのかもしれないと思いました。まずは私たち指導者の「理系食わず嫌い」をなくすところが大切だと感じました。

知ることを目標にすれば、取り組むことに対してのハードルは下がると感じました。

まずは自分自身が身近に感じることが大切だな、とあらためて感じました。子どもたちと、または指導者と一緒に楽しみながら取り組んでいきたいと思います。


» ガールスカウトのSTEAM教育への取り組み